• トップ >
  • ワインでモテる人モテない人 - 牡蠣とシャブリ -

ワインでモテる人モテない人

Vol1.シャブリと牡蠣

西麻布の交差点からビストロ通りを抜け、堀田坂の途中に、そのワインバーはあった。

分厚い一枚板のカウンター。薄暗い照明の下、今日も対照的なワイン好き男子の後ろ姿。

そのシルエットが、店の端と端でそれぞれの女性を口説いていた。

ワインイメージ

左端の壁には、自分が壁際に座って女性を右隣りに座らせる、 色白でキザなワインおたくジェームス。今年40才、独身。

一方、右の壁際にも、自らが壁際に座り、女性を左隣りに座らせる、
チャラい金髪ひげメガネ、ワインで酔うのが好きなドナルド。今年44才、既婚、二児の父。

ジェームスは黒板を指さしながらオーダーを始めた。

「すいません。シャブリ、温度低めで、的矢の生牡蠣と一緒に…」

「牡蠣とシャブリ」は相性が良い。それを隣にいるオフホワイトの服の女性も知っていることぐらいはジェームスも分かっている。

だがジェームスは、牡蠣とシャブリの相性が良い理由を語りたくて、そこは敢えてのオーダーだった。

「シャブリが牡蠣と相性いいのは有名だけどさ、なんで相性がいいか、理由は知ってる?意外に知らないでしょ?」

「うん、わからない。何でなんですか?」

牡蠣とワイン

ジェームスは熱く語り始めた。
シャブリの産地、フランス・ブルゴーニュ地方。
シャブリの土壌は「キンメリジャン」と呼ばれる、貝殻の化石が多く残る、白い石灰質。 実は、シャブリ地区は何千年も前は海の底だった。

海や貝のミネラルを吸い上げたシャブリの土壌。
そんな土壌で育った葡萄から出来るワインなのだから、海のミネラルを存分に吸った、牡蠣との相性は間違いないのだ。

キザなワインおたく ジェームズ君
チャラい既婚者 ドナルド君

一方のドナルドも「牡蠣とシャブリ」をオーダー。

「牡蠣ってめちゃくちゃ疲労回復にいいらしいよね」

「ああ、何か聞いたことある?。タウリンとか?」

「そうそう、皇帝ナポレオンが絶倫だったのは、1日100個、牡蠣を食べてたから、っていうしね」

「ええ!スゴそう!」

「すいませーん、牡蠣をあと100個くださーい! ……ってバカヤロ(笑)」

「アハハ!」

「”今夜、俺のナポレオンをおシャブリ!” って何だそれ!(笑)」

「(爆笑)超ウケる~!」

女性の紺色のワンピースが、薄暗い店内でもはっきり認識できるほど大きく揺れていた。

一方、カウンターの左端で、微動だにしないオフホワイトのブラウスのシルエット。ボトルを持つジェームスの右手が、右隣りのグラスに、ぎこちないバックハンドでワインを注いでいた。
一方のドナルドは、右手でボトルを持ち、左隣りの女性のグラスに、自ら彼女を抱くようにフォアハンドで注いでいるのだが、ドナルドの左手は女性の腰のあたりを抱くように、自然に寄り添っていた。

その後ろ姿に、今夜の答えを見たようだ。

その後ろ姿に、今夜の答えを見たようだ。
  • ワインモテ教訓1
  • ワインモテ教訓2

ワインでモテるひとモテないひとバックナンバー

  • vol.6 まずはツボを刺激して相性を知るべし。結婚とは、コルクの折れたワインである
  • vol.5 男の浮気は冒険に満ちたレジャーである。女性のOKサインを読み解くべし。例えば「今日飲めてしまう」。
  • vol.4 女性は歴史は雑学を好まないというが、例外もある。ワインも女性も、ホメて、回して、ゆっくり花を開かすべし。
  • vol.3 先に飲んでるよと伝える相手は、彼女ではなく、マスター。ワインと恋愛は先入観が邪魔をし、直感が出会いを逃す。
  • vol.2 駅に遠きワインバーは、夢に近し。女は、語りすぎる男を嫌い、語らせてくれる夜が好き。
  • vol.1 男は歴史を語りたがり、女は時を共有したがる生き物だ。カウンターでは女性を左隣に座らせるべし。
すずきB

すずきB(すずき・びぃ)

放送作家。1970年、静岡県生まれ。早大在学中「さんまのナンでもダービー」で放送作家デビュー。現在、「秘密のケンミンSHOW」「ぷっすま」など担当。グルメ番組を多く企画構成する他、料理漫画の原案や、スターシェフのプロジェクトCHEF-1も手掛ける。食べ歩きとワインが趣味でブログに綴る。
電子書籍も人気。http://suzukib.net

Wine Joker

ページの先頭へ